アラサー主婦、スペインで大学院生になる。

夫の都合でスペインに引っ越した三十路半ばの主婦が、大学院生になりました。渡西一年でDELE B2をギリギリ取得、ぜんぜん足りないスペイン語力に苦しめられながら、翻訳を学び中です。 

カヴァとワインと、時々ホッピー

Twitterのタイムラインで、マカロン論争とやらが盛り上がっていた。

何でも、マカロン嫌いの男性が、「マカロンを本気で美味しいと思っている女性なんて実際そんなにいないだろ?結局マカロン食ってる『可愛い自分』が好きってだけ!」というような趣旨の発言を投稿し、物議を醸しているらしい。

カロン・・・。10年前くらいにすげー流行ってた記憶があるけど、その人気はまだバリバリ健在なのか。30代になってから、糖分はほぼアルコールから摂取している私は、パティスリー業界の動向にはとことん疎くなってしまった。

1日あたりの酒量が現在の5分の1程度だった20代前半の頃、私もたまに百貨店の外資系洋菓子店にて、マカロンを購入していた。マカロンの御供は、もちろんわれらが名だたるスペインの銘酒、カヴァである。というか、カヴァの御供がマカロンだったと表現した方が正確で、マカロンがチョコレートやチーズになることもあった。そのうち、カヴァの量だけが飛躍的に増え、甘いものは欲しくなくなってしまった。

スペインに全く縁がなかった大学生の頃から、私はカヴァに目がなかった。別に銘柄にこだわっていたわけではなく、とにかく発泡している葡萄酒が好きなのである。発泡している葡萄酒の中で、近所のスーパーで手軽に買えて、お財布にも優しいのが、たまたまカヴァであったのだ。

そういえば、「カヴァ(発泡している葡萄酒)が好きだ」と発言すると、会話相手によっては、「おしゃれですねー!」と返してくる。スペイン在住の日本人にさえ、そのような返答をしてくる者がいて、非常に驚いた。そして、その反応は、件のアンチマカロン男子に似ているのだと、今書いていて気付いた。

ちなみに、私がカヴァの次に好きな酒は、ホッピーである。ビールとはまた違った、爽やかな苦みと、さりげなく主張する麦焼酎の薫りがよい。幅広い種類のつまみと相性が良い点も優れている。

この街では、カヴァは飲み放題であるが、ホッピーを見かけたことはない。和食レストランに置いてあるのも、日本酒、日本産ビール、焼酎あたりである。あとはとにかく、ワイン、ワイン、ワインである。日本人経営の本格的な寿司屋であっても、メニューにはカヴァが堂々とラインナップ入りしている。この街の人々は、いつでも、どこでも、誰でもワインを飲んでいて、カヴァやらワインやらがお洒落だという発想は皆無だと思われる。

確かに、カヴァを注ぐ用のチューリップグラスやフルートグラスは、キンミヤ焼酎のタンブラーより、見ようによってはお洒落かもしれない(これも意見が分かれるところではあると思うが)。しかし、飲み物だとか食べ物自体がお洒落だったり、可愛かったりするという価値観、これはいったい、どこからやってくるのであろうか。

このような価値観を持つ者に共通する点、それは、食に対する圧倒的な愛の欠如であると私は思う。その証拠に、私の「カヴァが好きだ」という発言に対して、「おしゃれですね」と返す人間の8割は、下戸か酒に弱いかのどちらかである。残り2割は、酒リテラシーが足りていない者たちだ。彼らにとって、酒とは単に酩酊するためだったり、気が合わない人間同士のコミュニケーションを無理やり成立させるためのツールにすぎない。つまり、酒に対する愛情がぜんぜん足りていないのだ。

たとえカヴァやワインに興味がなくとも、自身も日本酒だのウィスキーだの心から愛好する酒リテラシーの高い人間は、「おしゃれですねー」などという返しはしない。ジャンルは違えど、同好の士であることは、ちょっと言葉を交わせばすぐに伝わるからである。

あー、ホッピー飲みたい・・・・。