アラサー主婦、スペインで大学院生になる。

夫の都合でスペインに引っ越した三十路半ばの主婦が、大学院生になりました。渡西一年でDELE B2をギリギリ取得、ぜんぜん足りないスペイン語力に苦しめられながら、翻訳を学び中です。 

マダム先生

「英文学翻訳演習」のO先生は、マダム系だ。

翻訳の道ひとすじで40年、学部長もつとめていらっしゃる。

比較的カジュアルな人の多いこの街でも、ワンピースやセットアップでキメている。

英国が大好きで、休みのたびに訪れているらしい。

 

入学直後に行われた、マクドナルドでのクラス懇親会でも、早速イケてるグループの女子らに、「あの先生って贔屓するらしいで!」と噂されていた。まだ1回しか授業を受けていなかったにもかかわらず、である。そんな存在感のあるO先生なのだ。

 

そんな先生が、先週、クラスでイギリス人学生と話していた。

曰く、「翻訳は、自分の母語でするものですわよ。この道40年の私でも、特に文学作品を、たとえば英訳することなんて到底考えも及びません。私の言葉は、スペイン語。ひとつの言語持つ広がり、奥行きには、母国語話者にしか踏み込めない領域があるものですの。」とか。

イギリス人学生は、それを聞いて正直微妙な表情をしていた。

私も同じ表情をしていたと思う。

このクラスには、スペイン語非ネイティブが4人いる。私たちにとって、スペイン語は外国語で、「英文学翻訳演習」は、英語を、外国語に翻訳する作業だ。

先生にそういうつもりはないであろうが、この発言は、われわれ4人の努力を真向から否定しているように聞こえなくもない。

ちょっと無神経ではないかなと感じたひとコマであった。